
2025.04.23
専門用語を理解することで、樹脂切削に関する知識がより深まり、実際の加工現場での応用力を高めることができるでしょう。
つまり、設計者や加工者との間で、より正確でスムーズな意思疎通が可能になります。手戻りの削減、品質向上、そして効率的な作業につながるのです。
専門用語を理解することで、より高度な加工技術や最新の情報を習得しやすくなるというメリットもあります。
では、実際にどんな専門用語があるのか見ていきましょう。
樹脂切削の主な専門用語を解説
送り速度 (送り量) (Feed Rate)
切削工具がワーク(被削材)に対して単位時間あたりに進む距離のことです。一般的に、mm/min(ミリメートル毎分)やmm/rev(ミリメートル毎回転)などの単位で表されます。送り速度は、切削時間、切削抵抗、加工面の仕上がりなどに影響を与える重要な要素です。送り速度が速すぎると、工具への負荷が増大し、加工面が粗くなったり、工具寿命が短くなったりする可能性があります。逆に遅すぎると、切削時間が長くなり、生産性が低下します。
切り込み量 (Depth of Cut)
1回の切削で工具がワークの内部に切り込む深さのことです。一般的に、mm(ミリメートル)単位で表されます。切り込み量には、軸方向の切り込み量(Z軸方向)と径方向の切り込み量(XY平面方向)があります。切り込み量を大きくすると、一度に除去できる材料の量が増え、切削時間を短縮できますが、切削抵抗が増大し、工具や機械への負荷が大きくなります。
切削速度 (Cutting Speed)
切削工具の刃先とワークの接触点における相対的な速度のことです。一般的に、m/min(メートル毎分)の単位で表されます。切削速度は、工具の回転数(主軸回転数)と工具の直径によって決まります。適切な切削速度は、加工面の仕上がり、工具寿命、切削抵抗に大きく影響します。樹脂の種類や工具材質によって最適な切削速度が異なります。
バリ (Burr)
切削加工後にワークのエッジ部分に残る不要な突起のことです。バリは、製品の品質や組み立て精度を低下させる原因となります。樹脂の種類や切削条件、工具の状態などによってバリの発生しやすさが異なります。バリを抑制するためには、適切な切削条件の設定、シャープな刃先の工具の使用、バリ取り専用の工具の使用などの対策が取られます。
ビビリ振動 (Chattering)
切削加工中に発生する、工具やワークの周期的な振動のことです。ビビリ振動が発生すると、加工面の粗れ、異音、工具の早期摩耗、寸法精度の悪化などを引き起こします。ビビリ振動の原因は、機械剛性の不足、工具の突き出し量の大きさ、不適切な切削条件、ワークのクランプ不良など多岐にわたります。対策としては、切削速度や送り速度の調整、工具の剛性向上、ワークの安定した固定などが挙げられます。樹脂は一般的に剛性が低いため、金属に比べてビビリ振動が発生しやすい傾向があります。
溶着 (Welding)
樹脂切削において、切削熱によって溶けた切りくずが工具やワークに付着する現象のことです。溶着が発生すると、加工面の仕上がり不良、工具の摩耗促進、切削抵抗の増大などを引き起こします。特に熱可塑性樹脂は熱伝導率が低いため、切削熱が蓄積しやすく溶着が発生しやすい傾向があります。対策としては、適切なクーラントの使用、切削速度の調整、工具材質の選定(離型性の良いもの)、工具への特殊コーティングなどが有効です。
仕上げ代 (Finishing Allowance)
精密な最終形状を得るために、最終切削の前に残しておく材料の厚みのことです。粗加工で大まかに材料を取り除いた後、仕上げ代を残して精密な仕上げ加工を行うことで、高い寸法精度と良好な加工面を得ることができます。樹脂の種類や要求される精度によって、適切な仕上げ代を設定する必要があります。一般的に、最終的な加工面の品質に影響するため、均一な仕上げ代を残すことが重要ですPOMは自己潤滑性に優れ、比較的切削性の良い材料ですが、熱伝導率が低いため切削熱がこもりやすい特性を持ちます。