【難削材への挑戦:最適切削条件の探求】材料別アプローチ

blog

  1. HOME
  2. ビジネスブログ
  3. 【難削材への挑戦:最適切削条件の探求】材料別アプローチ

2025.04.16

エンジニアリングプラスチックの切削加工において、最適な切削条件の選定は、加工精度、面粗度、工具寿命、そして最終的な製品品質を大きく左右する重要な要素です。

材料の種類によってその特性は大きく異なるため、一律の条件で高品質な加工を実現することは困難です。ここでは、代表的なエンジニアリングプラスチックを例に、最適な切削条件選定のポイントを解説します。

材料別の切削条件まとめ

ポリアセタール(POM)

POMは自己潤滑性に優れ、比較的切削性の良い材料ですが、熱伝導率が低いため切削熱がこもりやすい特性を持ちます。

切削速度は中速(例:50~150m/min)を目安とし、送り速度はやや遅め(例:0.05~0.2mm/刃)に設定することで、良好な切りくず排出と寸法安定性を確保できます。

切込み量は、剛性の高い工具を使用する場合は比較的大きめに設定できますが、仕上げ加工では小さくします。

工具は、切れ味の良い超硬合金製エンドミルやドリルが適しています。

クーラントの使用は、切削熱の抑制と切りくずの排出を促進するために推奨されます。

ポリアミド(PA、ナイロン)

PAは靭性が高く、吸水性があるため、切削時に伸びやすく、寸法変化が生じやすい材料です。

切削速度は中速~やや遅め(例:40~120m/min)、送り速度は材料の硬度や粘度に応じて調整しますが、一般的には中程度(例:0.1~0.3mm/刃)で様子を見ます。

切込み量は、薄肉加工では特に注意が必要です。

工具は、ポジティブなすくい角を持つシャープな刃先のものが適しており、切りくずが絡みつきやすいため、適切な切りくず処理対策が必要です。

吸水による寸法変化を考慮し、加工前後での寸法管理が重要になります。

ポリカーボネート(PC)

PCは透明性、耐衝撃性に優れる一方、比較的軟らかく、溶着しやすい性質を持ちます。

切削速度はやや遅め(例:30~100m/min)、送り速度は中程度(例:0.1~0.25mm/刃)で、切削熱を抑えることが重要です。

切込み量は、特に仕上げ加工では細かく設定します。

工具は、ノンコートの超硬合金製エンドミルなど、摩擦係数の低いものが推奨されます。

クーラントは、油性タイプやエアブローを併用することで、溶着を抑制し、良好な加工面を得られます。

ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)

    PEEKは耐熱性、耐薬品性、機械的強度に優れるスーパーエンジニアリングプラスチックですが、硬度が高く、切削抵抗が大きいため、加工難易度が高い材料です。

    切削速度は低速~中速(例:20~80m/min)、送り速度は慎重に低め(例:0.03~0.15mm/刃)から試行錯誤する必要があります。

    切込み量も小さく設定し、段階的に深くしていくのが一般的です。

    工具は、高硬度で耐摩耗性に優れた超硬合金製エンドミルやインサートチップを使用し、剛性の高い機械で加工することが重要です。

    適切なクーラント供給は、工具寿命の延長と加工精度の維持に不可欠です。

      工具選定の共通ポイント

      上記以外にも、工具の材質、コーティング、刃数、刃先形状などが切削性能に影響を与えます。

      一般的に、樹脂加工では、切れ味が鋭く、切りくず排出性の良い工具が推奨されます。

      <<重要な注意点>>

      ここに記載した数値はあくまで一般的な目安であり、使用する工作機械、工具の種類、加工形状、要求される精度などによって最適な条件は異なります。

      実際の加工においては、テスト加工を行いながら、切削音、切りくずの状態、加工面の仕上がりなどを観察し、微調整を繰り返すことが、高品質な加工を実現するための最も確実な方法です。