樹脂・プラスチックのアニール処理

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2024.10.20

弊社で使用するプラスチック材には、アニール処理がされたものもあります。アニール処理(Annealing)とは、樹脂材の主に内部応力の解放や物理的特性の向上を目的とした熱処理工程です。アニール処理は、熱をかけてから徐々に冷却することで、材料内に蓄積された応力を和らげ、樹脂の耐久性や寸法安定性を高めるために行われます。

アニール処理の主な効果

樹脂のアニール処理とは、加熱して冷却することで内部応力を緩和し、樹脂の物理的・機械的特性を改善する工程です。通常、樹脂は成形時に急冷されるため、内部に残留応力が蓄積されます。この応力が残ると、後でひび割れや変形、寸法変化などの問題が発生しやすくなります。アニール処理を行うことで、樹脂内部の分子鎖がより安定した構造に再配置され、応力が緩和されるのです。以下、アニール処理の主な効果をまとめます。

①内部応力の解放: 成形時に生じた応力を取り除き、割れやひび割れの発生を防止します。

②寸法安定性の向上: アニール処理後、樹脂が熱や湿度の変化に対してより安定し、変形しにくくなります。

③機械的強度の向上: アニール処理によって樹脂の結晶化が進行し、強度や耐久性が向上する場合があります。

④透明度の改善: 特定の樹脂(例えばPMMAなど)では、アニール処理によって透明度が向上することがあります。

アニール処理の手順

具体的には、まず樹脂をガラス転移点(Tg)以上の温度にゆっくりと加熱します。温度は樹脂の種類に応じて異なりますが、通常はTgの数十度上に設定されます。その後、一定時間その温度を維持し、徐々に冷却していきます。急冷は内部応力を再び引き起こす可能性があるため、冷却は通常ゆっくり行います。

①適切な温度に加熱: 樹脂のガラス転移温度(Tg)以下の温度で加熱します。加熱温度は樹脂の種類に応じて決まります。

②一定時間保持: 加熱温度に到達した後、一定時間その温度を維持します。保持時間は材料や処理の目的によって異なります。

③徐々に冷却: 急激に冷却するのではなく、ゆっくりと冷却することで、内部応力を解放しながら寸法安定性を確保します。

アニール処理は、ポリカーボネート、ポリアミド(ナイロン)、PMMAなどのエンジニアリングプラスチックによく用いられます。また、3Dプリント素材でもアニール処理が品質向上に役立つことがあります。

この処理によって、樹脂の機械的強度、耐久性、寸法安定性が向上します。また、アニール処理は光学特性や熱的特性の向上にも寄与することがあり、特に透明樹脂の場合、透過率が改善されることがあります。製品の品質向上や長寿命化を図るために、樹脂製品の製造過程で重要な処理の一つとされています。