ABS樹脂とは
ABS樹脂は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの3つのモノマーからなる合成樹脂です。化学的には、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリブタジエン(PB)、ポリスチレン(PS)の重合体です。これらのモノマーの組み合わせにより、ABSは耐衝撃性、耐熱性、耐薬品性など要求性能に合致するグレードの多様性があります。優れた耐衝撃性によって、自動車部品、家電製品、おもちゃなどの製造に広く使用されています。また、ABSは加工性が高く、成形や切削が容易です。
高温に対して安定している耐熱性も有しており、自動車のエンジン部品や家電製品の筐体など、高温環境下での使用に適しています。さらに、耐薬品性があるため、多くの化学物質に対しても安定しています。 一方で、UV光に対する耐性が低いため、屋外での使用や長期間の曝露には向いていません。また、一部の溶剤には溶解することがあります。
ABS樹脂の特徴
ABS樹脂は成分の配合比によりさまざまな種類・グレードがあります。
強化ABS樹脂
主にガラス繊維などの繊維素材を加えることで剛性を高めたABS樹脂材です。繊維の種類もさまざまで、炭素繊維を加えて一般樹脂を遥かにしのぐ強度な剛性を持つものもあります。
耐熱ABS樹脂
α-メチルスチレン系ABS樹脂とフェニルマレイミド系ABS樹脂は、通常のABS樹脂よりも耐熱性を高めたものになります。自動車部品や家庭用電化製品など、高温環境下での使用が必要な場面で重宝されます。
耐候性改良グレード
ABS樹脂の3要素のうちのB-ブタジエンの代わりに別の素材を使用することで耐候性を高めた樹脂材。アクリルゴムを重合して耐候性と 耐衝撃性を強化したASA樹脂、塩素化ポリエチレンを重合して機械的強度と耐候性を高めたACS樹脂、エチレン系ゴムであるEPDMを重合させたAES樹脂など。
ABS樹脂の特徴
ABS樹脂は、アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンの3つのモノマーからなる共重合体であり、その特徴は多岐にわたります。まず、その強度と耐久性が挙げられます。ABSは衝撃に対して強く、機械的特性に優れています。これにより、様々な環境下で安定した性能を発揮します。また、ABSは加工性に優れており、熱可塑性樹脂であるため、成形や切削、加工が容易です。そのため、工業製品から家庭用品、玩具、自動車部品など、幅広い用途に利用されています。さらに、ABSは電気絶縁性が高いため、電子機器や家電製品の部品としても重要です。その一方で、ABSは耐熱性にやや欠けるため、高温環境下での使用には制限があります。また、一部の溶剤に対して溶解する性質があります。しかし、これらの欠点を補うために、ABS樹脂には改良型が開発されており、耐熱性や耐化学性が向上しています。ABS樹脂は、その多彩な特性と用途の広さから、製造業界で重要な位置を占めています。。
ABS樹脂の特徴 一覧表
耐熱性 | 耐薬品性 | 耐摩耗性 | 電気絶縁性 | 耐衝撃性 | 耐寒性 | 紫外線 | 難燃性 | 成形性 | 接着性 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
⚪︎ | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | × | ◎ | ◎ |
耐溶剤性 | 曲げ強度 |
---|---|
× | – |
グレードから素材の性質を調べたい方はこちら
ABS樹脂のメリット・デメリット
ABS樹脂のメリット・デメリットを簡単にまとめました。
素材ごとに性質や価格が異なるため、メリットとデメリットを正しく知った上で最適な素材を選択することが大切です。
ABS樹脂 加工のメリット
ABS樹脂は非常に耐久性があり、剛性が高い素材です。そのため、切削加工によって複雑な形状や細部を精密に加工することが可能です。また、ABS樹脂は比較的低コストで入手できるため、加工コストを抑えることができます。さらに、ABS樹脂は耐熱性にも優れており、加工後の部品が高温環境で使用される場合でも安定した性能を発揮します。加工後の部品は表面仕上げが容易で、塗装やメッキなどの処理を施しやすいのもメリットの一つです。
ABS樹脂 加工のデメリット
ABSは加工中に熱を発生させやすい素材です。この熱は切削工具と加工部位に損傷を与え、精度を低下させる可能性があります。また、ABSは比較的柔らかい素材であるため、加工中に振動や歪みが生じやすく、これも精度の問題を引き起こす可能性があります。さらに、ABSは切削加工時に粉じんや塵が発生しやすいため、作業場の清掃や作業者の安全に影響を与えることがあります。加工した表面が不均一になることもあり、仕上がりの品質に影響を与えることがあります。最後に、ABSは耐摩耗性が他の樹脂に比べて低いため、一部の用途では適していないことがあります。
ABS樹脂とよく比較される素材
ABSとよく似た樹脂材として、ポリカーボネート(PC)が挙げられます。ABSとPCは両方とも工業製品や家庭用品に広く使用される強固なプラスチックですが、いくつかの重要な特徴で異なります。ABSは一般的に耐衝撃性に優れ、機械的な応力に対して頑丈です。一方、PCはABSよりも高い強度を持ち、耐久性にも優れています。加工性では、ABSは比較的容易に成形および切削加工できるため、製造プロセスで広く使用されます。一方、PCはABSよりも高温で加工する必要がありますが、複雑な形状を持つ部品を作る際に優れた精度を提供します。 また、外観や表面の仕上げにも違いがあります。ABSは一般的に艶消しの表面を持ち、塗装やプリントがしやすい特性があります。一方、PCはクリアな透明性を持ち、光沢のある表面を得ることができます。 一般的に、ABSはPCよりも安価であり、コストを抑えて大量生産されることがあります。
ABS樹脂の加工を採用するのにお勧めのシーン
どんな時にABS樹脂を採用すべきかを簡単にまとめました。
リーズナブルに、安定した成形を
行いたいとき
軽量化を求めているとき
さまざまな加工方法での加工を
前提としているとき
自動車の内装部品や外装部品に適している
家電製品等で、特に耐久性が求められる場合
ABS樹脂 加工のポイント
加工の際のポイントをまとめました。
目的達成のために最適な素材を選択する
今回の加工における目的達成のためにABS樹脂が最適かを判断しましょう。「材料費が安価で手に入りやすいため、ABSだと一番コストダウンできる」と短絡的に考えると失敗することがあります。加工のしやすさや加工条件など、トータルで評価することが大切です。
欲しい精度や品質に最適な加工方法を選択する
加工方法は、望んだ精度や品質が実現できる手法を選びましょう。もっとも精度を高めたい場合は、切削加工がお勧めです。適切な切削工具の選択、冷却等の加工ケアを最適に行うことも製品クオリティに影響します。
品質に注意して加工業者を選択する
特にABS樹脂の場合は、バリ取りや面取りの品質や表面に傷がついていないかなど、素材の性質に合わせた後処理がきちんとなされているかチェックしましょう。加工部分の小さなひげが寸法を狂わせる原因となることも多いため、丁寧な仕事をする先を選ぶと安心です。 また、寸法や穴径などの納品前検査が精密になされているかも確認しましょう。
F・S・のABS樹脂加工の特徴
F・S・エンジニアリングのPE加工の特徴をまとめました
FEATURES
精度の高い加工が実現する
ABSの性質を考慮した設計、加工を行うため寸法に狂いが生じにくいのが特徴です。適切な切削速度と送り速度を確保します。切削速度が速すぎると熱が発生し、樹脂が溶けたり焼けたりして表面品質が劣化します。技術と経験で最適な切削加工を行います。
FEATURES
バリに強い
高い切削技術により、バリの発生を抑えた加工を実現します。バリが生じた場合にも速やかに適切に処理をすることで、高品質な樹脂パーツ、治具の納品に努めています。
FEATURES
パーツ1つからご相談が可能
高い精度の要求を可能にする切削加工の場合は、最小1個から承ることが可能です。素材や設計の変更、微調整、試作品としてなど「1個、精度の高い樹脂加工部品を手に入れたい」というお客様のお力になれます。
加工実績
食品加工・半導体・医療など、各分野のニーズを捉えた当社の加工実績をご紹介します。
汎用プラスチック
汎用プラスチック素材に関するご案内です。
※その他にもSPS・PMPなどさまざまな素材の取り扱いがございます。
汎用エンジニアプラスチック
機械的強度や耐熱性などに優れた特性を有する汎用エンプラ素材に関するご案内です。
※その他にもSPS・PMPなどさまざまな素材の取り扱いがございます。