PI(ポリイミド)とは
PI(ポリイミド樹脂)は、耐熱性や機械的強度に優れた高機能性樹脂の一つです。主に電子機器や航空宇宙分野で使用されることが多いスーパーエンプラです。化学的には、ポリイミドはイミド基(-CO-NH-CO-)を有するポリマーであり、その化学構造により優れた特性を持ちます。 ポリイミド樹脂の一般的な合成方法の一つに、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸ジアンヒドリドを原料とするものがあります。この反応では最初にポリアミック酸(PAA)が形成され、次に熱処理によってポリイミドが生成されます。ポリイミド樹脂は、300℃以上の高温に耐える耐熱性、 高い引張強度や弾性率を誇る機械的強度、高絶縁性と低誘電率を持つ電気絶縁性、腐食環境下でも使用可能な耐薬品性に優れる他、真空中でのガス放出が少なく、半導体製造や宇宙空間での使用に適する低アウトガス性を有します。ポリイミド樹脂の開発により、さらに高温での耐久性や高強度が求められる新たな用途が広がっています。
PI(ポリイミド)の特徴
PI(ポリイミド)は、その優れた耐熱性、機械的特性、電気特性から、広範な産業用途で使用される高性能な樹脂です。異なる化学構造と製造プロセスによって多様な種類があり、それぞれが特定の用途や特性を持っています。
熱可塑性ポリイミド
熱可塑性ポリイミドは、加熱すると柔らかくなり、冷却すると固化します。この特性により、成形や加工が比較的容易で、再利用も可能です。高いガラス転移温度と結晶性が特徴で、自動車部品、産業機器、原子力関連、航空宇宙関連など幅広い分野で活躍します。代表的な製品には、カプトンフィルム(Kapton)があり、高い耐熱性と絶縁性が特徴です。
熱硬化性ポリイミド
熱硬化性ポリイミドは、一度硬化すると再度加熱しても形状が変わらない性質を持ちます。高温環境下でも優れた寸法安定性と機械的強度を発揮し、耐熱性と良好な加工性から、飛行機のエンジンや機体、産業機器、原子力関連、航空宇宙関連に使用されます。特に高温での性能が要求される場面で利用されます。
非熱可塑性ポリイミド
一般的なポリイミドとして最も多量に生産されています。耐薬品性・耐熱性に優れ、フレキシブルプリント基板や自動車・航空機をはじめとする輸送機械の材料に使用されています。
PI(ポリイミド)の特徴
ポリイミド樹脂の最大の特徴はその耐熱性です。ポリイミドは非常に高い温度でも形状を保ち、熱変形しにくい性質を持っています。また、ポリイミド樹脂は化学的な安定性も高く、多くの化学薬品や溶剤に対して耐性があります。例えば、ポリイミドフィルムは化学的に腐食しにくいため、電子デバイスの保護フィルムや絶縁材として使用されることが多いです。
機械的強度もポリイミド樹脂の魅力の一つです。引張強度や耐摩耗性に優れているため、機械部品やベアリングなどの用途にも適しています。また、軽量でありながら強度を持つため、航空宇宙産業でも重要な役割を果たしています。さらに、ポリイミド樹脂は電気絶縁性が高く、電気絶縁材料としても使用されます。特にフレキシブルプリント基板(FPC)では、ポリイミドフィルムが広く使われています。これは、フィルムが薄くて柔軟性があるため、複雑な電子回路の設計や製造に適しているからです。ポリイミドは、多岐にわたる産業分野でカスタマイズされたソリューションを提供することが可能です。
PI(ポリイミド)の特徴 一覧表
耐熱性 | 耐薬品性 | 耐摩耗性 | 電気絶縁性 | 難燃性 | 機械的強度 | 耐放射線性 | 透明性 | 成形性 | 接着性 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | × | ▵ | ◎ |
軽量 | コスト |
---|---|
◎ | × |
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PI(ポリイミド)のメリット・デメリット
PI(ポリイミド)のメリット・デメリットを簡単にまとめました。
素材ごとに性質や価格が異なるため、メリットとデメリットを正しく知った上で最適な素材を選択することが大切です。
PI(ポリイミド)加工のデメリット
PI(ポリイミド)の加工には多くのメリットがあります。耐熱性、機械的強度、化学的安定性、電気絶縁性などの優れた特性により、様々な産業分野で高性能な製品を提供することが可能です。さらに、加工の多様性により幅広い用途に対応できるため、ポリイミドは今後も多くの分野で重要な役割を果たすことが期待されています。
PI(ポリイミド)加工のデメリット
PI(ポリイミド)のデメリットは、その加工の難しさです。ポリイミドは非常に硬くて丈夫な材料であり、その優れた機械的強度が加工の難しさに直結します。特に、切削加工や穴あけ加工などの機械加工では、専用の高硬度工具やダイヤモンドコーティング工具を使用する必要があり、それにより加工コストが上昇します。また、表面仕上げの難しさもデメリットとして考えられます。ポリイミドの高い硬度と耐薬品性は、その表面を滑らかに仕上げるのが難しい原因となります。特に光学用途や電子機器で高精度な表面仕上げが求められる場合、この問題は顕著になります。表面の微細な凹凸を除去するためには、研磨といった追加の加工工程が必要となります。さらに、ポリイミドの原材料の価格が高いこともあり、総じて加工コストが高くなるデメリットがあります。
PI(ポリイミド)とよく比較される素材
PI(ポリイミド)樹脂とよく似た樹脂材料として、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂をピックアップし、それぞれの特徴を比較してみましょう。 PIは、極めて高い耐熱性、耐薬品性、電気的特性を持つため、特に高温環境や厳しい化学環境での使用に適しています。 PPSは、約260°Cの耐熱性、非常に優れた耐薬品性、難燃性を持ち、自動車部品や化学装置など、厳しい条件下での使用に適しています。 これらの材料選定においては、それぞれの特性を十分に理解し、用途や環境に応じて最適な材料を選ぶことが重要です。
PI(ポリイミド)加工を採用するのにお勧めのシーン
どんな時にポリイミドを採用すべきかを簡単にまとめました。
300℃以上の高温下で安定性のある素材がほしい
半導体製造など優れた電気絶縁性が必要なとき
腐食性の高い薬品に耐える部品を探している
宇宙機器の断熱材の素材がほしい
電装部品に使用できる耐熱性と耐久性が必要
PI(ポリイミド)加工のポイント
加工の際のポイントをまとめました。
目的達成のために最適な素材を選択する
今回の加工における目的達成のためにポリイミドが最適かを判断しましょう。「高価だが、あらゆる特性を高い水準で兼ね備えたポリイミドであれば問題ない」と短絡的に考えると失敗することがあります。加工のしやすさや加工条件など、トータルで評価することが大切です。
欲しい精度や品質に最適な加工方法を選択する
加工方法は、望んだ精度や品質が実現できる手法を選びましょう。もっとも精度を高めたい場合は、切削加工がお勧めです。
品質に注意して加工業者を選択する
ポリイミドの場合は、品質や表面の仕上げ具合など、素材の性質に合わせた後処理がきちんとなされているかチェックしましょう。加工部分の小さな傷や欠けが寸法・性能を狂わせる原因となることも多いため、丁寧な仕事をする先を選ぶと安心です。 また、寸法や穴径などの納品前検査が精密になされているかも確認しましょう。
F・S・のPI(ポリイミド)加工の特徴
F・S・エンジニアリングのPI加工の特徴をまとめました
FEATURES
精度の高い加工が実現する
PI(ポリイミド)の性質を考慮した設計、加工を行うため寸法に狂いが生じにくいのが特徴です。 微細加工機、マシニングセンター、NC旋盤など豊富な工作機器を使い、最適な手法・速度・回転数で加工を行います。
FEATURES
バリに強い
高い切削技術により、バリの発生を抑えた加工を実現します。バリが生じた場合にも速やかに適切に処理をすることで、高品質な樹脂パーツ、治具の納品に努めています。
FEATURES
パーツ1つからご相談が可能
高い精度の要求を可能にする切削加工の場合は、最小1個から承ることが可能です。素材や設計の変更、微調整、試作品としてなど「1個、精度の高い樹脂加工部品を手に入れたい」というお客様のお力になれます。
加工実績
食品加工・半導体・医療など、各分野のニーズを捉えた当社の加工実績をご紹介します。
汎用プラスチック
汎用プラスチック素材に関するご案内です。
※その他にもSPS・PMPなどさまざまな素材の取り扱いがございます。
汎用エンジニアプラスチック
機械的強度や耐熱性などに優れた特性を有する汎用エンプラ素材に関するご案内です。
※その他にもSPS・PMPなどさまざまな素材の取り扱いがございます。